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2017年5月13日土曜日

「太平洋の土下座」“真のコンセプト”が明らかに

太平洋の土下座(以下、DGZP:DoGeZa in the Pacific)は、アバロンヒルが35年以上前に発表した「Victory in the Pacific」(以下、VITP)の影響を強く受けてデザインした太平洋戦争を扱う戦略級ボードウォーゲームです。VITPはシンプルで扱いやすいルールと良好なゲームバランスで高い評価を得ており、米国では今でも全国規模の大会を行っています。
DGZPは、VITPをさらに“軽く”するためにユニットの数を抑え、戦闘処理の手間を減らしています。VITPでは空母戦艦重巡洋艦まで1隻1駒だったのをDGZPでは空母戦艦までの戦隊単位とし、占領マーカーは「生き残っている駒」を使うなどの変更によってマーカー含めて全部で50駒にまとめました。
ターン進行は「移動→戦闘→点数集計→帰港/再配置」で、戦闘処理はVITPが攻撃するユニットごとに戦力の数だけダイスを振り「6が出たら命中」としていたのを、DGZPでは、戦闘に参加するユニットの戦力合計とダイスを“1個”振って出た目を足し、その数を比較して多い側が少ない側の駒を1つ除去します(俗にいうガザラ方式)。
元コマンドマガジン編集長(今は黒幕)にて現盆栽ゲームズ主任デザイナーの中黒氏撮影によるテストプレイ中の「太平洋の土下座」(中黒氏のブログ「ソークオフだよ人生は(ほぼ日刊ウォーゲーム情報合併中)」より転載)
このように、VITPからシステムがさらにシンプルになったDGZPですが、一方で、日本軍が動かす空母、戦艦、陸軍部隊の合計を日本が占領している南方エリアから得るポイントの数までに制限する「日本軍の資源問題」も導入しています。また、戦艦の利用価値はVITPと比べてがくっと下がり、基地航空隊の影響力はぐぐっと上がるなど、太平洋戦争の力関係をVITPより史実に近くしています。
ただ、
VITPの軽量化がDGZPの最終目的ではありません。あくまでもこれは手段にすぎないのです。もともと、DGZPを着想するきっかけとなったのは、同じ太平洋戦争の戦略級ボードウォーゲーム「“海運級”太平洋戦争」のデザインで、「どうやったら米軍をフィリピン攻略に誘導できるんだ……」と悩んだときでした。「レイテ沖海戦」で代表される1944年10月からのフィリピン作戦は軍事的には全く無意味とされています。実施した理由はただ一つ、マッカーサー陸軍大将の面目のためだけ。
面目のためだけ? ならば、日米それぞれで陸軍担当海軍担当プレイヤーを用意して、4人が自分の所属する組織の「面目」「プライド」を競う仕組みにしたらいいのでないか。
陸海軍の確執を「会議室レベル」で再現したカードゲームもいろいろありますが、DGZPでは陸海軍の確執が戦場に及ぼす影響を体感できるはずです。陸海軍とも敵部隊を撃滅して自分が所属する組織の面目を上げていきます。しかし、自分の部隊だけで戦えればいいのですが、そうもいかず、海軍が敵の陸軍がいる拠点を攻略するには陸軍に「土下座」して陸軍部隊を借り、陸軍が敵の艦隊がいるエリアを攻略するには海軍に「土下座」して艦隊を借りることになります。

こうして面目を上げたり下げたりして戦争を戦い抜き、終戦後に最も面目の上がっていた組織が勝つという、ある意味戦争の本当の姿を顕在化してしまうのが太平洋の土下座をデザインした「真のコンセプト」だったりします。VITPのコンパクト化は「マルチ部分に注力するため戦闘パートは極力軽量にしてプレイヤーの負荷を減らす」ための選択すぎません……とはいえ、テストプレイでは二人対戦も楽しんでもらえていたようです。
二人で対戦するVITPミニもよし
四人で対戦するVITPマルチもよし
そんな太平洋の土下座で一人でも多くの人がこの興味部がいボードウォーゲームの世界に足を踏み外しますように


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